【インタビュ―長澤豊・JA全農経営管理委員会会長】あらゆる力を結集し確実に成長する全農 – 農業協同組合新聞

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 7月の総代会でJA全農の経営管理委員会会長に長澤豊氏が選任された。農協改革を乗り越えて、これからのJA全農がどのような挑戦をしていくのかを、長澤会長に忌憚なくお話いただいた。

長澤豊・JA全農経営管理委員会会長(写真)インタビューに応じる長澤豊・JA全農経営管理委員会会長

 ――会長に就任され一か月少々経ちました。この間、天候不順で東北では農作物への影響が心配されていますが…

 ヤマセが吹き、米への影響が心配です。先日、秋田の雄物川流域の洪水被災地へ行ってきましたが、水稲や施設園芸、花きなどに大きな被害が出ています。農業は自然相手の仕事です。農家はそれで暮らしており、国民の食料問題にも繋がりますから、ある程度は国が守るべきだと思います。われわれJAグループとしてもしっかりと政府や農水省とコミュニケーションをとり、将来を見据えた農業を構築していくことを、3年間でやっていきたいと考えています。

◆現場の声にしなやかに対応する組織に

 ――全農の「自己改革」が注目されますが…。

 自己改革の答えは「現場にある」と考えています。農業法人、集落営農組織が「農協離れ」しているといわれますが、その責任は彼らにはありません。時代の変化に気づき、対応・対策をしっかりやってこなかったという反省をJAグループはしなければいけません。スピード感をもって改めるべきことは改めていかなければと考えています。
 戦後70年経って、農協組織が一番大変な時期ですが、それは組織として与えられた条件であり、その現実から逃げることはできません。したがって、組織の力や知恵などあらゆるものを受け入れながら、21世紀に協同組合が発展できるように努力しなければいけないと思います。そういう姿を組合員や国民に見てもらう。そのためには、しっかりと変化している現場の声を聞き、しなやかに対応できる組織にならなければいけないと思いますし、そういう意味で、全農は成長できる組織だと確信しています。

 ――組合員からの全農への期待は大きなものがありますね。

 

 例えば肥料のリン鉱石などの海外原料調達機能など、全農が培ってきた長所や、営農・技術センターなどの研究機関など民間企業ではできないものがたくさんあります。これらをさらに成長させていくことによって、農業関連の業界を変えていく力になっていきます。
 これまで足りなかったのは、販売面だと思います。国内の食のビジネスは80兆円規模です。そこで全農がイニシアティブを充分に発揮してきたのか。民間企業はいろいろなツールを活用し成長していますが、全農には協同組合の強みを活かしてできることがたくさんあります。組合員が生産した農産物を加工したりして変化させることで、80兆円になるということにさらに強く関わり、国民から「全農はそこまで関わっているんだ」と認められ、全農や国産農畜産物への理解を深める。さらに国民の食料の安全・安心を担保できる組織として、国民から支持されなければいけません。
 積極的にそうした事業展開をして得た収益は、地域の農協や組合員に還元することで地方活性化につながると思います。
 全農の長所を活かし成長させながら、解決すべき課題を一つひとつ解決して、積極的に事業展開できる基盤づくりをしたいと考えています。
 そのことを全国の組合長さんや組合員さんに理解して頂かなければなりませんから、私が出向いていく機会を増やしたいと考えています。

◆営農経済事業は総合農協の力の源

 ――販売面を強化するために「営業開発部」を新設されましたね。

 

 いままでは「推進」という言い方をしていましたが、販売関連子会社を含めて「営業」・「ビジネス」をするという感覚を全職員にもって欲しいと思っています。
 各部門とか会社ごとではなく「全農のブランド」として戦略的にトータルに発信していくことが極めて重要です。ビジネスはビジネスとしてきちんと展開することで、子会社にとっても効率のいい経営に結びついていくといえます。

 ――総合力の発揮ということですか?

 

 総合農協の力の源は営農経済事業です。それがあって信用・共済事業も成立つわけです。そうしたJAグループの総合力を活かしたストーリーを考えなければ、組合員や地域が離れていきます。
 農業に関していえば、日本農業イコール米政策あるいは畜産政策といえますが、私は果樹や花を含めて園芸関連農産物は、世界でも先進的な栽培技術を持っていますから、これをさらに進化させ、米に代わる園芸振興の深掘りを進めて行く必要があると考えています。これは環境問題にも、輸出問題にもつながってくると思います。

 ――水田農業についてはどうお考えですか?

 

 園芸振興の前にあるのが「日本農業をどうするのか」であり、まずは水田農業をどうするかです。
 食料自給率は38%です。JAグループも農水省も国も、これは先進国のなかでは非常に恥ずかしい数字だということをきちんと認識する必要があります。いまは経済的に余裕があり海外から買えますが、今後は分かりませんから、まずは自給率水準を高めるために日本農業をどうするのか。そのベースは水田農業がきちんと成り立つことです。
 農業や食に対する未就学児を含めた食農教育が極めて重要です。そのためにJAグループとしての広報活動が大事です。自給率が高まれば農家所得も向上するのですから。

◆ブロック別に戦略的農業振興策を提案

 ――日本農業の問題として中山間地がありますが、どうお考えですか。

 

 中山間地は国土の7割近くを占めていますが、高齢化が進み土地が荒れ、山に還りつつあり、山もすでに荒れています。しかし、中山間地は農業だけではなく、治水や環境さらに自然を守るなど大きな役割を果たしてきましたし、これからも果たしていきます。そのためにどう農地を守り、高齢化を迎えた人たちを支えるのか。全農はすでに生活インフラ面で取り組んでいますが、問題は農業です。一つはグリーンツーリズム・観光ですが、すそ野は広いけれど取組みはまだ一部です。ヨーロッパでは国境と環境を守るという意味で国が相当な支援をしている国があります。日本でももっと考えて欲しいです。
 平場集中、大都会集中、若い人中心では日本の食料は守れません。中山間地を含めた農業振興をどう提案できるのかを、全農としてできるだけ早く出したいと、いま検討していますが、全国一律的な農業振興は難しいので、東北や関東というブロックごとの戦略的な農業振興を提案していきたいと思っています。
 そして、定年退職した人が、年金プラス生きがいで簡単に農業ができるような農業技術を全農が開発をし、農協だけではできない部分に積極的に全農も関わって、中山間地の生産振興をしていく必要があると考えています。
 それらを含めた全国のブロック戦略モデルでは、リタイアした団塊世代でも生活でき、楽しいと想像でき、彼らが作った農産物を全農が販売する。IoTツールを活用することで農業生産の管理もできます。そうした新しい農業の提案を全農が踏み込んでやっていく必要があると思っています。

 
 
 ――いろいろな可能性に全農は積極的に関わり提案をしていく…。

 

 何事もポジティブに考える。ポジティブに考えることで新しいものが生まれてくると考えています。現実からは逃げられませんから、JAグループ以外も含めていろいろな力を借り、前に進んでいく。それが協同組合の原点である共生社会や共生経済につながっていくと思っています。

◆不透明な時代に確実に成長する農協

 ――全農の職員や農協の組合員や役職員へのメッセージをお願いします。

 

 今回、5人の方に員外経営管理委員に就任していただき、経済界からも注目されています。この人たちの知見を活かしながら、しっかりと経営基盤づくりをしていきます。それは一人ひとりの職員が夢をもてるような、そういう職場風土にするということです。私が先頭に立って汗を流すことが基本ですが、幹部職員も共に汗を流すという共有感が大切だと思います。
 政治も経済も不透明感が漂っていますが、農協だけは確実に成長しているという姿を見せていきたいと思っていますので、一緒に頑張っていただきたいと思います。


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