老後資金の現実 「年金+3000万円」が必要額の目安 – 日本経済新聞

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 ようやく秋も本格化してきたある晩のこと。筧家のダイニングテーブルでは、子供たちと食事を終えた幸子がまた、キャッシュフロー表を作っています。今回はシニア世代からの依頼とか。そこへ同窓会で久しぶりに昔の仲間と会った良男が帰宅しました。

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 筧良男(かけい・よしお、52=中) 
筧恵(かけい・めぐみ、25) 

 幸子 お帰りなさい。同窓会は楽しかった?

 良男 まあね。でもみんな50歳を過ぎて相応に年を取ったよ。話題は人間ドックの結果とか、退職金や年金とか、健康とお金が中心。私もそうだが、人生も後半に入って老後のお金や暮らしが気になる感じだな。

  人生の三大資金といえば、教育と住宅、そして老後資金よね。教育と住宅資金については教えてもらったけど、老後資金のことも知りたいわ。

 良男 老後資金は2000万円とか3000万円かかるという人もいれば、「1億円必要」などという人もいる。いくら必要なのか、私も知りたい。

 幸子 そうね。恵はだいぶ先だけど、パパには知ってもらいたいわ。老後資金で難しいのは自分が何歳まで生きるか分からないこと。長生きすればそれだけお金が必要になるからよ。まず考えたいのは、定年から亡くなるまでの「老後」の長さ。平均でどれぐらいだと思う?

  日本人は長生きなので平均寿命は男女とも80歳を超えていたんじゃないかしら。60歳で定年になるとしたら、少なくとも20年以上じゃない?

 幸子 平均寿命は男性が80.98歳で女性が87.14歳(2016年)。ともに世界2位の長寿で毎年のように過去最高を更新しているわ。でも老後のお金を考えるときは、平均寿命ではなく「平均余命」をよく使うの。ある年齢の人が平均してその後、何年生きるかを表すもので、60歳の人の平均余命は男性が23.67年、女性が28.91年。老後の長さは少なくともこれぐらいは想定しておきたいわね。

 良男 男は84歳、女は89歳ということか。

 幸子 老後資金の考え方はいろいろあるけど、社会保険労務士の森本幸人さんの試算を紹介するわね。まずは老後の生活費。総務省の家計調査では、2人以上の世帯のうち高齢無職世帯(世帯主が60歳以上)の支出は月27万円弱。食費や交通・通信費などが多いわ。夫が84歳で亡くなるまでの24年で支出は約7700万円。残された妻の支出はそれまでの7割と考えて89歳で亡くなるまでの7年で約1600万円。合計で約9300万円になるの。

 良男 月27万円というのはちょっと少ない気がするな。ゆとりあるセカンドライフには、月35万円ぐらい必要だという話を聞いたことがある。

  老後は年金をもらえるわけだから、この金額を丸々準備する必要はないのよね。

 幸子 老後の収入の柱は公的年金よ。もらえる年金額は夫が会社員、妻が専業主婦という厚生労働省のモデル世帯でみると、夫婦で月22万円ほどね。この年金額を基に2人とも65歳からもらい始め、夫の死後は妻が自分の老齢基礎年金に加えて遺族厚生年金(夫の厚生年金の4分の3)をもらうとすれば、世帯で受け取る合計の年金額は約6300万円になるわ。

 良男 すると、差し引き約3000万円不足するということか。この不足額をどうやって準備するかが問題だな。

  会社員なら退職金をもらう人が多いわよね。金額は人により異なるけど、例えば2000万円もらえば、残り1000万円ということね。

 幸子 全部を老後資金に充てられるなら、そういうことになるわ。残りは預貯金かしら。でも最も現実的なのは60歳以降も働き続けることね。仮に月収20万円で65歳まで5年間働けば、単純計算で収入は1200万円のプラス。年金をもらい始めるまでの期間を埋める目的もあり、60歳以降も働く人は今後ますます増えると思うわ。

 良男 退職金と働き続けることを織り込めば、不足額はカバーできそうだけど、60歳になってもすぐには悠々自適とはいかないわけか。やれやれ。

 幸子 平均余命を超えて長く生きれば、さらにお金が必要になるの。ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんは「現役時代から支出を見直して家計をダウンサイジングしたい」と指摘しているわ。それで貯蓄を増やしておけば、長生きのリスクや将来の年金額の目減りの対策にもなるわね。氏家さんは「住宅ローンがある人は繰り上げ返済して、定年前にできるだけ残額を減らしておきたい」とも話していたわ。

  でも出費はほかにもあるんじゃない? 結婚資金の話をしたとき、親の援助が100万円と聞いたような……。

 幸子 出費で大きいのは、住宅、介護、援助の3つ。住宅はリフォームが多く、水回り中心の小規模改修でも300万円程度は考えておきたいわね。車の買い替えもよくあるの。介護は自分たち夫婦だけでなく親の場合もあり、経済的な負担が大きいと聞くわ。子や孫への援助は、結婚などのイベントのほか、家の新築や入学・進学など機会が結構多いの。これらはすべての人に当てはまる出費ではないけど、心当たりがある人はあらかじめ備えておきたいわね。

 良男 同窓会で、親のすねをずっとかじっている子供に手を焼いているやつがいたな。恵! 分かっているだろうが、あまり親をあてにするなよ。

■働き続けることが大切
 社会保険労務士 森本幸人さん
 老後の生活を考えた場合、重要なのは長く働くことです。現役時代より収入が減っても、働き続ければ老後資金の取り崩しのスピードを遅らせることができます。しかも厚生年金に加入して働けば年金の受取額を増やせるうえ、同時に加入する健康保険の様々なメリットを受けることができます。一方、子供への援助や親の介護など、老後資金を脅かす要因も数多くあります。子供に独立を促したり、親の介護費用は親自身で負担することを確認し合ったり、早めに対応する必要があるでしょう。
 晩婚・晩産が進み、最近は50代後半になっても子供の教育費に追われ、老後の蓄えまで手が回らない夫婦が増えています。貯蓄ができるうちにしっかりと蓄えることに加え、65歳以降も仕事を見つけて働くことが有力な選択肢になってくると思います。
(聞き手は土井誠司)

[日本経済新聞夕刊2017年9月13日付]




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