日産ゴーンは去ったのか? その1 | NEXT MEDIA “Japan In-depth … – Japan In-depth

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遠藤功治(株式会社SBI証券)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

【まとめ】

・ゴーン氏は代表権ある会長に留まる

・日産の経営基本構造は変わらず

・中期経営計画は未達に終わる

経営基本構造は不変

Ghosn is gone? Not quite, not yet.(ゴーンは去ったのか? いやいやまだいますよ)

2月23日、日産自動車はカルロス・ゴーン氏が社長職を辞し、西川共同CEOが社長につく人事を発表、ゴーン氏は引き続き代表権のある取締役会長を務めるとのこと。これを受けて、“何故社長交代の会見をしないのか”、“何故この時期に辞めるのか”、“何故会長職に留まるのか”、“何故日産の経営から退くのか”、、、とメディアは“何故”のオンパレード。これに対して筆者はつぶやく“何故世間はこんなに騒ぐのだろう?”経営の基本は何も変わらない、と思うからである。

日産は基本的にはフランス・ルノー傘下の自動車会社である。ルノーに買収された訳ではなく、吸収合併された訳でもない独立した会社ではあるが、フランスのルノー(筆頭株主はフランス政府)という会社とのアライアンスを機軸に、その資本構成から言っても、ゴーン氏到着からの経緯を見ても、フランス国民の税金とフランス人トップの強力なリーダーシップによって、倒産スレスレの状態から息を吹き返した会社である。そのトップはアライアンス取締役会の議長、よってChairmanと呼ばれ、ゴーン氏がこれにあたる。社長はこの取締役会が任命する。昔ながらの日本の会社にはあまり見られない経営の形である。

日本で言えば、社長が実質的にトップ、会長は社長の任を降りた半分リタイアしたようなポジションと捉えられがちだが、このルノー・日産アライアンスを含めた海外の事例では、全くその性格を異にする。取締役会議長なり会長なりChairmanがトップなのである。ゴーン氏が取締役会のトップなのだから、取締役会は自然と彼の息のかかったメンバー構成となる。

よって、実質的には今回ゴーン氏が西川氏を社長に指名し、また場合によっては、ゴーン会長は西川新社長をいつでもクビに出来るポジションにいる。そしてそのヒエラルキーが反対になることは無い。どこをどう見ても、今回の人事で日産の命令系統が変わることは100%ありえない。この点で、ゴーン氏が社長を離れたからといって、取締役会の議長職、それも代表権を持ったChairmanなのだから、日産の経営の基本的構造は何も変わらない。もしそうなら、社長交代の会見など必要ない。敢えて言うなら、Day-to-dayのハンコやサインをするような仕事は西川氏に移る、ということぐらいである。

さて取締役会議長として、代表取締役会長として、ゴーン氏の今後の主戦場はどこか、特に取り組むべき課題は何か、大きくは次の2つの事項であろう。

1)ルノー・日産+三菱自動車のアライアンス強化による、台数面だけではない、経営面での真の1000万台クラブ入り

そして、

2)フランス政府からの真の独立によるアライアンスの最終形の構

である。

真の1千万台クラブ入りなるか?

第1の点であるが、1999年にゴーン氏が来日して以来、彼は数字を追及してきた。数字とは、販売台数、経営効率、利益率と言ったものである。自動車は装置産業である、よって販売台数は多ければ多いほど良い、このスケールメリットの拡大を目指す、これが1台当りのコストを下げ、利益率の向上につながる、これをルノーとのアライアンスを通して実行する、、、。

昨年三菱自動車を実質的には買収し、1000万台クラブ入りが目前になったが、3月6日、PSAによるOPEL買収が実現、OPEL及びVauxhallブランドの車がGMの台数から抜けることとなった。GMグループの世界販売台数は、これで1000万台から900万台を割る水準に下がることとなり、トヨタやVWと競っていた1000万台クラブからGMが降りることとなった。ルノー・日産・三菱自連合は、“タナボタ式”に、販売台数でGMを抜いて、世界第3位に躍り出ることとなった。

数値目標は非常に重要な経営のベンチマークになるが、ことこの世界販売台数1000万台という水準には、経営の足をすくわれることもある。GMは1000万台目前で倒産(Chapter 11)となり、トヨタも米国での大量リコールという品質問題に直面、VWに至ってはディーゼル車の排ガス計測の不正と、1000万台クラブ3社総てが問題に直面した販売水準なのである。

中計は未達の可能性濃厚

さてルノー・日産・三菱自連合はというと、現在進行中の中期計画の未達が濃厚となっている。ゴーン会長は1999年の来日以来、コミットメント経営を標榜、会社全体も従業員個々にも数値目標を持たせ、達成を義務とする。達成出来なければ“失敗”の烙印を押される。原則リターンマッチは無い。現在進行中の中期経営計画は2011年に策定された5ヵ年計画で“Power 88”と呼ばれ、今月末までに世界販売シェア8%、営業利益率8%を達成するというものである。

常々ゴーン会長が言っていたことは、8%シェアは目標、8%利益率はコミットメント、というものであった。現状では、8%のグローバルシェア目標達成は非常に遠く、実際は6%台後半で着地する可能性が高い。コミットメントされた営業利益率だが、これは損益計算書の表面上の営業利益率ではなく、日産はここに中国事業を戻して入れなおして計算した比例連結ベースの数値、という注釈を入れる。

以前中国事業は比例連結され中国利益の半分が日産の連結決算の営業利益に反映されていたものが、現在は持分法適用となり、営業利益には一部を除いて中国の利益は反映されない。これを以前のように比例連結した場合に、8%の営業利益率が達成されていれば良い、という考え方である。それで実際はどうか。やはり達成は相当困難な状況で、今期の営業利益率は中国分を入れても、7.2%程度となる。つまり中期経営計画におけるコミットメントは未達ということになる。

一部メディアがゴーン会長が中期経営計画未達の責任を取って社長を辞任する、というようなトーンで記事を出していたが、事実としてこれは間違いである。間違いではあるが、従来からのコミットメント経営でゴーン会長が実行してきたことをレビューすれば、この指摘も的を得ていることになる。

日産は策定当初の前提に比べ、新興国経済が弱く、国内販売も低迷を続けたことを未達の理由に掲げている模様だが、その一方で米国や中国では、ほぼ一貫して堅調な市場拡大が続いた。為替も2012年以降緩やかな円安傾向である。中期経営計画で掲げられた2つの数値(目標であろうがコミットメントであろうが)が、共に未達になりそうだ、ということは、ゴーン会長にとっては想定外の事態であろう。再度強調するが、Power88は“未達”である、コミットメントは達成されない。

その2に続く。全2回)



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この記事を書いた人
遠藤功治株式会社SBI証券  投資調査部 専任部長兼シニアリサーチフェロー

1984年に野村證券入社、以来、SGウォーバーグ、リーマンブラザーズ、シュローダー、クレディスイスと、欧米系の外資系投資銀行にて活躍、証券アナリスト歴は通算32年に上る。うち、約27年間が、自動車・自動車部品業界、3年間が電機・電子部品業界の業界・企業分析に携わる。 その間、日経アナリストランキングやInstitutional Investors ランキングでは、常に上位に位置2000年日経アナリストランキング自動車部門第1位)。その豊富な業界知識と語学力を生かし、金融業界のみならず、テレビや新聞・雑誌を中心に、数々のマスコミ・報道番組にも登場、主に自動車業界の現状分析につき、解説を披露している。また、“トップアナリストの業界分析”(日本経済新聞社、共著)など、出版本も多数。日系の主要な自動車会社・部品会社に招かれてのセミナーや勉強会等、講義の機会も多数に上る。最近では、日本経団連や外国特派員協会での講演(東京他)、国連・ILOでの講演(ジュネーブ)や、ダボス夏季会議での基調講演などがあり、海外の自動車・自動車部品メーカー、また、大学・研究機関・国連関係の知己も多い。2016年7月より、株式会社SBI証券に移籍、引き続き自動車・自動車部品関係を担当すると供に、新素材、自動運転(ADAS)、人口知能(AI)、ロボット分野のリサーチにも注力している。

東京出身、58歳

遠藤功治
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