日本農業の打撃増大 合意を装ったTPP11 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏 – 日本農業新聞

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 TPP11の「大筋合意」は、強引に合意を装ったというのが正確であろう。閣僚声明文の通り、core elements(核となる事項)について合意したが、未解決の事項も残されている。これで大筋合意と言うなら「言葉遊び」で何とでも言える。だから、カナダが首脳間で合意を確認するレベルでないと言ったのは当然だ。ジャイアンたる米国にへつらう日本が、米国がいないと途端に自分がジャイアンぶるのもカナダの反発を招いた。

 日米自由貿易協定(FTA)を避けるためにTPP11を急いだという解釈も違う。トランプ政権中は米国のTPP復帰は絶望的な中で米国抜きのTPP11が合意されたら、出遅れる米国は、逆に日米FTAの要求を強めるのが必定である。かつ、その際にはTPP以上の譲歩を要求されるのも目に見えている。

 日本はそれを見越している。そもそも、米国の離脱後にTPPを強行批准したのが、トランプ大統領へのTPPプラスの国益差し出しの意思表示だ。トランプ政権へのTPP合意への上乗せ譲歩リストも作成済みである。先日のトランプ大統領の来日時にも共同声明では明示されなかったが、日米FTAへの強い意思表示があった。

 情けない話だが、米国にはTPP以上を差し出す準備はできているから、日米FTAと当面のTPP11は矛盾しない。いずれも米国への従属アピールだ。米国内のグローバル企業と結託する政治家は、米国民の声とは反対に、今でも「お友達」企業のもうけのためのTPP型ルールをアジア太平洋地域に広げたいという思いが変わらないから、そういう米国のTPP推進勢力に対して、日本が「TPPの灯を消さない」努力を続けているところを見せることも重要な米国へのメッセージだ。

 しかも、米国を含むTPPで農産物について合意した内容を米国抜きのTPP11で修正せずに生かしたら、例えば、オーストラリアやニュージーランドは、米国分を含めて日本が譲歩した乳製品の輸入枠を全部使えることになる。米国が怒って米国にもFTAで輸入枠を作れということになるのは必定で、結果的に日本の自由化度は全体としてTPPより間違いなく高まり、国内農業の打撃は大きくなる。

 ただでさえ量が大き過ぎて実効性がないと評されていた牛肉などの緊急輸入制限の発動基準数量も未改定だから、TPP11の国は、米国抜きで、ほぼ制限なく日本に輸出できる。合意を急ぐために日本農業はないがしろにされた。

 TPPでは米国の強いハード系チーズを譲り、日欧EPAではEUはソフト系が強いから、今度はそれも差し出して、結局、全面的自由化になってしまったという流れも、いかにも場当たり的で戦略性がない証左だ。TPPでもEU・カナダFTAでも、国益として乳製品関税を死守したカナダを少しは見習うべきだ。

 盲目的な米国へのごますりと戦略なき見せ掛けの成果主義では国民の命は守れない。




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