セル生産を改善する、ネットワークと6軸制御に対応した卓上はんだ付ロボット – EE Times Japan

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 多品種少量生産に向く「セル」。生産期間が短く、段取り替えが頻繁に起こる現場だ。ここに欠かせないのが高い投資対効果を期待でき、素早く適切なはんだ付を実行する手段である。

 ジャパンユニックスは、卓上はんだ付ロボットの新製品「DFシリーズ」を製品化、2016年9月から出荷を開始する(図1)。

 「製品のライフサイクルが短くなり、多品種少量生産がますます要求される中、高密度化やチップの小型化など製品自体は高度化している。このような矛盾するニーズに対応し、リーンな生産ラインを作るには、専用機ではなく、汎用の卓上はんだ付ロボットを導入した方が有利だと考える」(ジャパンユニックス)。

 同社は約20年間で累計3000台の卓上はんだ付ロボットを出荷している。高い実装品質を要求される3つの市場の顧客に向けた。車載系の電子部品やスマートフォンなどのコンシューマ用電子部品の実装、EMSだ。性能を高めつつ、「価格は前モデルと同等とした」(同社)。

図1 卓上はんだ付ロボットの外観 3機種のうち、最上位機種「UNIX-DF404S」のワークサイズは400mm×365mm

IoTやI4.0を見据えた通信機能の強化とタクトタイム短縮

 新製品の特徴は大きく2つある。インダストリー4.0(I4.0)やIoTに対応するための通信機能の導入と、タクトタイムの短縮に役立つさまざまな新機能の追加だ。

 通信機能は、顧客からの要望が特に高いという。機器の状態をリアルタイムで外部に送信し、外部からの制御を受け付ける。これを実現するためにLAN(イーサネット)とCOMポートを通じた通信に対応した(図2)。温度情報やカウンタ情報、エラーの種類などを上位ネットワークに送出できる。ネットワーク上位に置いたホストPCにインストールするリモート監視ソフトウェアも開発した。「データのやりとりをオープンにしており、他社のサービスと組み合わせやすいように工夫した」(同社)。

図2 工場内ネットワークと卓上はんだ付ロボットの関係 PLCやLAN、ハブは顧客が工場内に用意したものをそのまま用いる


 生産性向上に役立つ主な新機能は7つある。異形部品のはんだ付などに向くのが「3Dソルダリング」機能だ。従来製品は4軸で動く。中核部分全体が左右に動き(Y軸)、はんだ付ヘッドの高さを変え(Z軸)、はんだ付ヘッドが回転できた(R軸)。そして、ワークが前後に動く(X軸)。

 今回、対象物を置くワーク部分に2軸(回転や角度)を追加できるように改良した(図3、図4)。「他社製品も備えていない新機能だ。従来2台の卓上はんだ付ロボットが必要だった現場でも1台で処理できる場合がある」(同社)。設置スペースや運用コストを抑えるために効果的だ。

 新製品はレーザーはんだ付にも対応している。レーザー使用時にファイバーなどの破損を抑えるために上部のツールを固定したとしても、ワークを回転することで段取りが容易になるという。

図3 ワーク側に2軸を追加できる


 加工速度の改善もある。「はんだ付は、生産ラインの中でも時間を要する工程であるため、高速化によってタクトタイムを減らす効果が大きい」(同社)。例えばXY軸の最高速度は、従来品に対して12%向上を実現した(図5)。

図5 タクトタイムの短縮効果


 タクトタイムの短縮に役立つ新機能が他に2つある。1つは「ポイントグラフィック編集機能」だ。セル生産では、加工対象物を切り替える際の段取りに時間がかかる。卓上はんだ付ロボットでは、はんだ付の作業内容を教え込むティーチングだ。

 従来品ではできなかったオフラインティーチングに新製品で対応した。ガーバーデータや基板データを取り込み、PC上ではんだ付箇所ごとにコマンドを選択してプログラムデータに変換できる。

 もう1つは温度特性の改善だ(図6)。はんだ付に最適な温度まで立ち上げる時間が従来よりも約20秒短縮。加えて、はんだ付中の温度回復特性が良くなり、下降温度を約20℃抑制できた。「立ち上がり時間と温度回復時間の短縮によって、1時間当たりの加工量が増える。さらに温度回復時間が短縮すると、高品質なはんだ付を実現しやすくなる」(同社)。温度測定位置の変更と、こて先を加熱するヒーターの改善で実現した。

図6 温度特性を改善した


 品質の改善につながるのが「新型はんだ送り装置」だ。「はんだ付で一番多い、嫌がられる不良がはんだボールだ。はんだ付中にはんだが飛び散り、ショートの原因になる他、外観も不良になる」(同社)。これを避けるには、あらかじめはんだに切れ込み(クリーンカット)を入れて、中心部のフラックス(融剤)の気化による圧力を逃がせばよい(図7)。

 新製品では、新型はんだ送り装置を採用することで、切れ込みを入れる「クリーンカットフィーダー」と、切れ込みを入れない「ロールフィーダー」を簡単に交換できるようになる(図8)。

 なお、新型はんだ送り装置では、はんだ径ごとにロールフィーダーを用意することができる。現場で調整する必要がなくなり、いわゆるポカミスが減るという。

図7 クリーンカット前(左)とカット後のはんだ断面の変化


図8 新型はんだ送り装置の特徴


 この他、図1にあるようにスイッチボックスにセレクタスイッチを設けた。2種類のプログラムを切り替える際に役立ち、管理者とオペレーターで利用できる機能を切り分けやすい。ティーチングペンダントを9カ国語対応に改善したことで、マザー工場を海外に展開する際にも、オペレーターの訓練に要する時間を短縮できる。

 なお、3Dソルダリングとポイントグラフィック編集機能、リモート監視ソフトウェアは、オプション機能として提供する。

顧客の自動化、効率化、品質向上を助けるソルダリングラボ

 卓上はんだ付ロボットには、生産性を高める効果がある。品質向上にも役立つものの、難しい加工品を相手にする際には支援が必要だ。一般的な工作機械と同様、エンジニアリングサービスがないとロボットの能力を100%引き出せない。

 「はんだ付に関する顧客の問題解決を助ける『ソルダリングラボ』サービスを提供している。世界各国から年間1000件を超える依頼があり、約1万件のはんだ付データベースとして役立てている」(同社)。独自のはんだ付結果までサポートするサービスだ。

 はんだ付の課題を抱えた顧客が、PCB基板と実装部品を送ると、良品作りに適したはんだの組成や温度、コテ先の移動速度などさまざまな条件を、独自のはんだ付理論によって、ジャパンユニックスが引き出す。顧客ははんだ付を施したPCB基板とその過程を撮影した動画をレポートとともに受け取ることができる。卓上はんだ付ロボットに入力するプログラムも後ほど入手できる。

 同社は、はんだ付の結果を判断する一つの基準として、IPC標準も取り扱っている。はんだ付の評価は、まずはユーザーの要求品質が第一。特に日本のユーザーは要求が高く、高品質を求められる。その一方で、海外での生産時や欧米メーカーが要求するのは、IPC標準の場合が多いからだ。

 卓上はんだ付ロボットは良品を生み出し、IPC標準はもちろん、ユーザー独自の要求品質も満たすことができる。




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