【2018新春企画】生産性向上、直面する中小元請けと下請け – 日刊建設通信新聞

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建設市場が新設から維持管理に軸足を移す中、ドローンは点検業務の無人化にも威力を発揮する
(写真と本文は関係ありません)

 建設産業は、住宅・社会資本の整備・維持管理とともに、地域では経済・雇用を支え、防災・減災、老朽化対策、耐震化、インフラメンテナンスなど「地域の守り手」として重要な役割を担っている。一方、少子高齢社会に起因する労働力人口の減少に伴う担い手の確保が大きな課題となっており、地域建設業でも生産性向上を推進する機運が高まりつつある。

地場・中小建設業 広域ネットワークで生産性向上推進

 地方中小建設企業の多くは、新たな取り組みに挑戦しようとしても、自社の力だけでは思うように進められないのが現状だ。そうした中、中小建設企業同士が連携し、持てるノウハウを中心に経営資源を共有する広域ネットワークを形成することで、こうした状況を打開する動きが出てきた。

◇ドローン活用で協力体制構築 
 その1つが、「やんちゃな土木ネットワーク(YDN)」の幹事会社連携体(静岡県)による、空撮と3次元測量、新素材を活用した土木施工の生産性向上をテーマにした取り組みだ。「元気な生コンネットワーク(GNN)」の事務局から運営上のアドバイスを得て、YDNの会員企業を募集。マルチコプター(ドローン)による空撮測量と3次元測量技術の確立や、新資材であるGPPの普及、加盟会社相互間の業務の繁閑調整に取り組んでいる。また、GNNの大会や勉強会を利用したYDNのプレゼンテーションや加盟の勧誘、YDN、GNNと土木の魅力を発信する民間プロジェクト「みんなのどぼく」の3者による協力体制の確立にも取り組み、高校生を対象にした現場見学会も実施した。
 その結果、空撮測量と3次元測量の技術を施工計画や安全管理に活用する将来的な見通しが立ち、普及を図る確かな手応えを感じている。
 このほかにも、ドローンによる省力化の事例がある。切盛土量の算定もその1つ。写真測量を行うことで、広範囲な造成現場の現状測量を実施し、切盛土量を迅速に精度良く算定できる。ドローンとデジタルカメラを使った道路用地造成工事の現場測量や土工事の進捗管理、ドローンと3Dスキャナーを使った土工事の進捗管理などの先行事例もある。

◇全体最適の建築生産システムを研究  
 労働力・後継者不足が深刻の度を増していく中、共通の問題意識を持つ地域建設企業が結集し、大所高所から客観的に問題を分析し、解決を図る動きもある。
 地域建設業新未来研究会(東京都)が、取り組む、全国の地域建設業における全体最適の建築生産システムの研究もその1つ。委員20社で研究会を設立、課題解決のツールとしてTOC(制約条件の理論)を導入し、ボトルネックの抽出、先行事例の視察などを行った上で、下部組織としてワーキンググループを設置。▽多発している施工段階での設計変更の改善▽維持管理とメンテナンスへの対応▽BIM、CIM、情報化施工による建設現場の生産性の向上--をテーマに改善策を模索し、それぞれ課題の抽出、ボトルネックの明確化、事例の共有を図っている。

◇地中埋設管の探知でMC付き試掘法開発
 北海道内の公共事業で発生する事故のうち、ライフライン切断事故は12%。地中埋設管の切断事故も6%を占めるが、「埋設管が図面どおりに埋設されていない」「物理探査は高価である」などの理由で対策があまり進んでいない。埋設管工事で事故を起こさず、効率的に作業を行うことができる工法が求められている。北海道土木技術開発連携会(北海道)は、地中埋設管の探知に有効なマイクロセンサー(MC)付きの試掘法の開発に取り組んだ。その結果、掘削機の実用化に一定のめどをつけた。これが完成すれば、省力化と工期短縮の可能性が大きく高まる。

◇スマホ情報提供システムを構築
 既存の顧客から、住宅部品の不具合についての連絡や修理・維持修繕の依頼などを受け、対応のため営業担当者が現場に出向くケースが多く、コストの増加、業務効率の低下を招いている。スマホ情報提供システム構築プロジェクトチーム(静岡県)が取り組んだ、スマートフォンを活用した業務フローの改善による生産性向上を図るプロジェクトでは、浜松市の「土木スマホ通報システム」の仕組みなどを参考に、協力会社と連携して、顧客からの情報提供、それに対する返答と見積もりがスムーズに行えるシステムの開発を進めた。土木スマホ通報システムの開発企業の協力も得て、見積もり依頼者から提供される画像と、GPS機能による位置情報を利用して、簡単に見積もり作成までできる「スマホ情報提供システム」を構築。営業担当者が現場へ出向く回数が削減され、顧客から正確な情報が提供されることで、業務フローが大きく改善された。

設計・コンサル ソフトバンクが日建、パシコンと提携

握手する亀井日建設計社長(左)と今井ソフトバンク副社長

 ソフトバンクが、2017年11月27日に日建設計、12月14日にパシフィックコンサルタンツと相次いで業務提携を発表したことは、建設産業界に驚きをもって迎えられた。
 日建設計とはIoT(モノのインターネット)やロボットなどを活用した次世代スマートビルディングの共同開発設計、パシフィックコンサルタンツとは各種IoTデバイスから取得したデータなどを組み合わせてAI(人工知能)による分析を経た最適な公共インフラの共同開発設計に取り組む。ともにオープン化して広く社会実装していく考えだ。
 また、建設コンサルタントでは、AIを活用した解析や推計技術などを次々と実用化しており、解析業務の大幅な省力化を実現するとともに、より高精度な情報の提供につなげている。
 大日本コンサルタンタントは、AIによる補修・補強設計業務を構築。18年度から実用化し、将来は防災関連事業に適用範囲を拡大していく。
 川崎地質もAIによる路面下空洞化解析技術を開発して受託サービスを開始した。地中レーダーで得られた異常反応を画像と波形変化の両面から機械学習させて推論システムにより空洞反応を自動で判定する。
 パスコは、AI技術による抽出成果を事業化し、都市変化解析マップの自動生成や、撮影画像から台数を直接推計できる駐車車両推計マップを実現している。こうしたAIが得意とする解析技術の進展は、従来の人海戦術によらない新たな建設コンサルタントあり方を示している。

専門工事業 若年入職者にキャリアパス提示

 建設工事で働き方改革に伴う生産性向上の取り組みが求められているのは、専門工事業も同様だ。かつて親方の背中を「見て覚えろ」と言われて一人前の職人の道を歩んだ専門工事業の若年入職者を取り巻く環境は大きく変わった。労働力減少を前提に今、多くの元請けと専門工事業は、「人や経験値だけに頼らない」「匠の技にこだわる時代は終わった」ことが共通の認識になりつつある。
 属人的な技術者や職人などのそれまでの経験だけに頼らない新たな取り組みが出来る背景には、IoTやAI、ビッグデータ、ロボットなどを活用した技術革新と機械化というこれまでとは全く違う対応に乗り出したことがある。
 一方、専門工事業は担い手確保・育成の視点で、若年入職者の職人教育とキャリアパス提示を始めている。若年入職者の賃金アップは、躯体も仕上げも、1日の仕事量(施工量)がバロメーターだ。
 高校の進路指導担当者から7、8年前には相手にもされなかった京都のタイル工事業「長谷川」(長谷川正直社長)は、タイル工のキャリアパスを示した「タイル工10カ年事業」を策定、近年は毎年高卒者を採用している。高卒職人は全て社員。5年で職長、8年で登録技能者、その後は独立も認める。ただこうした取り組みも、先行き含め一定の仕事量があってこそ成り立つ。
 2017年秋、関西駐在のあるゼネコン支店長は主要な協力会加盟企業経営者にこう断言した。「来年、首都圏は建築工事でピークを迎える。そこで、関西の仕事はないから首都圏に来てほしい」と。
 企業規模が大きく、分厚い協力会組織であるはずのゼネコンで、建築系職人の遠距離異動は余りないといわれる中、そう呼び掛けたゼネコン支店長は、「大規模建築工事案件は、職人それぞれの技量によって左右される。品質を担保し効率よく施工するなら、腕のいい専門工事業に声をかけるのも当然」と言い切る。先進の技術を活用しつつ熟練の技をどう継承していくか、試行錯誤は続く。

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