コメ兵・社長が語る「新品である、よりもだいじなこと」 – 現代ビジネス

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創業1947年、中古の高級時計、バッグ、宝石などを扱う老舗・コメ兵を取材した。「いらんものはコメ兵へ売ろぉ~う!」のCMで、創業の地・東海地方で高い知名度を誇る同社だが、近年は全国へ進出、東証二部上場企業へと成長している。創業家出身の石原卓児社長(45歳)は、MBAを取得し業績を一気に伸ばしたやり手だった。

コメ兵の石原卓児社長

中古品だからこそ「信用第一」

【信用】

リユース市場の企業は「新品以上に信用が大事」だと思っています。例えば仕入れ。メーカーに発注するのと違い、当社はお客様からお譲りいただかなければお店に商品が並べられません。だからバイヤーは、例えば「この時計の黒は人気があるから高く売れる」というように、市場を知り尽くした上で、お客様に信頼いただける価格を提示し続ける必要があります。

当社は品質管理も徹底しており、例えば時計の針の磁気まで抜いています。腕時計を電子レンジやテレビの近くに長時間置いておくと、金属が磁気を帯び、時間が狂いやすくなるのです。このように、見えない部分までやらなければ中古品に対するお客様の不安を払拭できません。

接客や店舗デザインも同じで、雑然と並べるなどもってのほか。お店の雰囲気から「リユース品を使うのは賢いこと」「ここの商品なら大丈夫!」と感じていただく必要があります。きれい事でなく、我々には新品以上の「信用」が求められるのです。

【学び】

業績が伸びたのは、組織や商品の流れを全面的に改革したからです。それまで、当社のビジネスは「我流」でした。例えば仕入れた商品は、店員の手があいたときに検品し、商品化していました。しかし、これでは店が忙しいと生産性が悪くなり、商品化が追いつかなくなります。そこで名古屋に商品管理専門の部門を設置して検品と商品化の機能を集約し、効率化と社員の技術向上を同時に実現したのです。

また、バイヤーの接客や査定・真贋の見分けは先輩が時間のあるときに後輩に教えるという形をとっていたのですが、教育大学を出た優秀な社員に頼んで、社員教育プログラムと研修制度をつくってもらいました。

彼を店舗からバックオフィスに移すのは短期的に見れば戦力ダウンでしたが、長期的には大きなプラスがありました。限界を突破するには、皆で「学ぶ」しかない。私自身、商品展示の専門家にいろいろ教えてもらいました。

ただし先生たちはリユース市場の専門家ではない。そこで、社内で展示の先生となるような人材を育成しました。これも大きなプラスになりました。

「人」が一番難しく、面白い

【仕組み】

長期的な視点で「仕組み」をつくることも大切です。例えば、リユース市場の将来を考え、BtoB(業者間)のオークションを始めました。商品を仕入れるとき、たまたま在庫が多いという理由でお客様から安く買い取るのは申し訳ない。一方、市場価格より少し高値でもいいから仕入れたい商品もあります。

そこで事業者同士で商品を売り買いすることでこうした状況を解消しようと考えたのです。始めたら驚くほど盛り上がり、リユース市場全体の活性化にも結びつきました。現在は顧客向けのネット販売も盛り上がっており、ITの時代をしっかり先取りしていると自負しています。

【ヒト】

経営で最も難しいのは「人」です。長く続いてきた仕組みを変えるには、特定の人の権限を小さくしなければならない場面もありますし、社員からは単純に「この仕事が好きだったのに」といった声があがります。だから、その声に耳を傾け、話し合うしかありません。

役職者に何度も時間をもらって「今変わらなきゃいつ変わるのですか! なにも権限を奪うつもりでやっているのではないのです」と説得したり、転勤を不安に感じる社員を「僕も東京に行ったけど学びが多かったよ」と励ましたり。今は変化することに社員が慣れてきたからか「やってください」と言えばみんな動いてくれます。

ただし、現場が納得しないまま動くのは最悪の事態ですから、本音は聞き出す必要があります。やっぱり「人」が一番難しく、面白い。

【継承】

曾祖父が米屋の「米兵」を始めたのは明治30年のこと。その後、戦後の物がない時代、祖父がリヤカーで家々をまわって古着を買い取り、行商で売ったことから当社がスタートしました。

’70年代からは、地元・愛知県で例のCMを放送し始めましたが、耳に残るためか、先生や親が子どもに「コメ兵に売るぞ!」と叱るのが流行った。当時子どもだった私は、友達から何度も「このまえ、お前の店に売られそうになったぞ」と苦情を言われ、困ったものです。

そんな歴史の中には自慢もあります。先日、社史を作ったとき、90歳を過ぎた元従業員の女性が「古着を洗うだけでなく消毒していた」「防虫剤の臭いをとるためアイロンがけもしていた」と教えてくれたのです。「モノ」が貴重な時代に、私の祖父は信用を何よりも大切にしていたのです。結局、当時から受け継いできたこの姿勢が、一番大事なのだと思います。

(取材・文/夏目人生法則)

いしはら・たくじ/’72年愛知県生まれ。MBAを取得し、’96年からヨドバシカメラで接客販売の基礎を学ぶ。’98年にコメ兵へ入社、カメラ、時計売り場の責任者を経て、有楽町店店長などを歴任。その後、’11年に常務取締役、’12年に代表取締役副社長、’13年には代表取締役社長に就任し、以来現職

『週刊現代』2017年11月4日号より




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