「2階建てバス」はどこへ行く? 老朽化進むも国産モデルなし 代替迫られるバス会社 – ニコニコニュース

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高速バスなど採用されていた2階建てバスが、数を減らしています。国産唯一の2階建てバス「エアロキング」の製造が中止されたためです。これを導入していたバス事業者は、車両の代替という課題に、どのように対応しているのでしょうか。

規制緩和で採用が増えた「エアロキング」

高速バスや定期観光バスを中心に、2階建てのバスが走っていることがあります。その多くでは、「エアロキング」という名の車両が使われています。

2階建てバス「エアロキング」は、三菱自動車工業(現:三菱ふそうトラック・バス)が1983(昭和58)年の東京モーターショーで発表し、1985(昭和60)年に発売を開始しました。当時は空前の「2階建バスブーム」で、日野自動車や日産ディーゼル(現:UDトラックス)といったライバルメーカーも相次いで2階建てバスを発表していました。車内からの眺望のよさなどから観光バスとしての需要が高かったのですが、法律の関係で2階部分の室内高を高くすることができず、居住性の問題から、やがて観光バスとしての需要は少なくなります。

その後、1990年代に入り、2階建てバスのワンマン運行が基準緩和によって可能になったことから、乗客を多く運べるメリットが生かせる夜行高速バスへの採用例が、JR系バス会社を中心に増えていきます。特に、運行路線が多いジェイアールバス関東や西日本ジェイアールバスでは、「エアロキング」を大量に導入。その一部は現在でも各路線で活躍しています。そのため、2008年に発表された最終モデルでは、あらかじめ長距離路線の運行に特化されたパッケージングとなっていました。

「ポスト新長期排ガス規制」が影響して製造中止に

「エアロキング」は2005(平成17)年から3年間の製造中止を挟みつつも、じつに25年ものあいだ販売されました。10年から15年でフルモデルチェンジする国産バスにおいては、ロングセラー商品といえます。しかしながら、三菱ふそうトラック・バスは、2010(平成22)年6月に「エアロキング」の製造および販売中止を発表します。

その理由は、「平成21年(ポスト新長期)排ガス規制」。同年9月に実施されたこの排ガス規制への対応は、コスト面から困難であるとメーカー側が判断したからです。

「エアロキング」の製造、販売中止は、乗客を多く運べるメリットに目をつけて導入したバス事業者にとっては、代替車両の検討に頭を悩ませることになりました。

「2階建て」走らせ続ける? 置き換える? 各社さまざまな動き

現在運行されている「エアロキング」は、ほとんどが導入されて7年から10年以上経過しており、老朽化も顕在化しています。「エアロキング」を多く導入していたバス事業者は、車両の代替にどのように対応しているのでしょうか。

ジェイアールバス関東

夜行の「ドリーム号」「プレミアムドリーム号」、車中泊のない昼行の「東海道昼特急号」などで「エアロキング」を導入しています。一時は50台以上保有していましたが、徐々に廃車を進めており、ハイデッカー(客室の床を通常より高くした車両)車を使用した3列シートの「グランドリーム号」や、同じくハイデッカー車を使用した4列シートの「青春エコドリーム号」で代替しています。とはいえ、現在でも一定数の「エアロキング」が在籍しており、どちらかといえば「エアロキング」を大事に使用している印象を受けます。ただ今後、環境対策や安全対策を理由に経年車を一掃する計画があり、「エアロキング」の大規模な廃車と車両代替が予想されます。

ジェイアール東海バス

夜行「ドリーム号」の一部系統や、名古屋~広島線、名古屋~松山線などに「エアロキング」が導入されました。「ドリーム号」シリーズでは、東京~名古屋線で3列シートの「エアロキング」を使っていた「ドリームなごや号」の一部、「ドリームなごや・三河号」「ドリームなごや・新宿号」がそれぞれ、4列シートの「青春ドリームなごや号」に変更されたほか、名古屋~広島線、名古屋~松山線については3列シートのハイデッカー車に代替されています。現在「エアロキング」を使っている東京~名古屋線の「ドリーム号」シリーズでも、今後は一部を除き、4列シートの「青春ドリームなごや号」に順次変更していくことが予想されます。

西日本ジェイアールバス

一時期は50台以上もの「エアロキング」を保有しており、現在でも東京~京阪神線の「プレミアムドリーム号」や「東海道昼特急号」などで活躍していますが、近年はハイデッカー車を使用した3列シートの「グランドリーム号」や、ハイデッカー車で4列シートの「青春エコドリーム号」への代替を急速に進めています。すでに大阪~金沢線は、夜行便を除いて3列シートの「グランドリーム」化が完了しているほか、2017年12月には大阪~広島線も「グランドリーム」「青春ドリーム」化されました。東京~京阪神線でも、いずれはハイデッカータイプの車両に統一されることが予想されます。

高速バス用から改造するケースも

「エアロキング」を別の車両に置き換えるだけでなく、改造して高速バス以外に使用するケースもあります。

中国ジェイアールバス

東京~岡山・倉敷、東京~松江・出雲、名古屋~広島、大阪~広島の各路線で導入されていましたが、すべてハイデッカータイプの3列シート車に置き換えられました。一部の車両は改造され、広島市内で2階建てのオープン(屋根なし)バス「めいぷるスカイ」として活躍しています。

ジェイアール四国バス

東京と四国を結ぶ系統や、名古屋~松山線で導入され、前者では1階に最高グレードである2列シートの「プレミアムシート」が搭載されています。しかしながら、東京と四国を結ぶ系統における2階建てバスの運行は現在、曜日限定です。3列シートを搭載したハイデッカー車の導入も進んでおり、今後、順次置き換えられることが予想されます。

近鉄バス

京阪神と東北、関東、四国、九州を結ぶ路線で最大10台導入されていましたが、老朽化により大半が3列シートのハイデッカー車に置き換えられ、現在は大阪~宇都宮(栃木県)線「とちのき号」で運行されています。また、一部の車両は改造され、大阪市内で2階建て定期観光バス「OSAKA SKY VISTA」として運行しています。

西日本鉄道(西鉄バス)

2009(平成21)年12月に東京~福岡線「はかた号」用として2台導入され、1台のなかに2列、3列、4列シートをそれぞれ配置した「3クラス制」が当時注目を集めました。その後、個室型シートを搭載したスーパーハイデッカー車(ハイデッカー車よりも床面を高くしたバス)に置き換えられ「はかた号」からは引退しましたが、現在もイベント向けの車両として使われています。

「エアロキング」に代わる2階建てバスはあるのか

前述のとおり、現在は国内で2階建てバスが製造、販売されていませんが、海外ではヨーロッパを中心に2階建てバスが製造され、活躍しています。日本でも、2016年にはとバス、スカニア社(スウェーデン)、バンホール社(ベルギー)の3社が新型2階建てバスを共同開発し、これを東京ヤサカ観光バス(東京都北区)も導入するなど、新たな動きがあります。

海外製の2階建てバスは、1980年代の「2階建てバスブーム」期に多くのバス会社が導入していたほか、一時期ジェイアールバス関東や西日本ジェイアールバスが夜行高速バスとして導入していましたが、メンテナンスコストの高さや、相次いで発生したエンジン火災に対する懸念などで、本格普及には至っていません。

バス事業者側にとっては、サービスレベルを落とさずに多くの乗客を運べる2階建てバスは魅力でもあります。しかし、「エアロキング」に代わる国産2階建てバスがない以上、コスト面などを考えると、ハイデッカーまたはスーパーハイデッカータイプの車両で代替せざるを得ないのが現状です。今後「エアロキング」に代わる国産2階建てバスが新たに登場するのか、それとも海外製の2階建てバスが再び普及することになるのか、注目したいところです。



2階建てバス「エアロキング」で運行されるジェイアール東海バスの「ドリームなごや号」(須田浩司撮影)。

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