MBAは「マンモス」か?――次世代リーダーは現場から育てるのが日本流 (1/2) – ITmedia エグゼクティブ

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 『結論を言おう、日本人にMBAはいらない』という新書が発刊された。MBA(経営学修士)の取得を目指している人にとっては衝撃的なタイトルだが、著者であるローランド・ベルガー日本法人会長、遠藤功氏がこの本で伝えたかったことは何なのか。70歳の定年まで10年以上を残す早稲田大学ビジネススクール(WBS)の教授を、2016年3月末で退任してまでこの本を執筆した真意を遠藤氏に聞いた。

「日本人にMBAはいらない」の真意

ローランド・ベルガー日本法人会長 遠藤功氏


 ビジネススクールで教えている先生は、多かれ少なかれ同じような感覚を持っているのではないでしょうか。学生達に一生懸命教えていますが、これで「本当に次世代のビジネスリーダーが育つのだろうか」という疑問です。企業を取り巻く環境が劇的に変化し、先行きが不透明な現在、ビジネススクールのカリキュラムは、1908年のハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の設立以来、大きくは変わっていません。

 経営も、テクノロジーも、企業環境も劇的に様変わりしている現在、日本のビジネススクールはこの変化に適合できているのでしょうか。正直に言えば、ビジネススクールはまったく変化に対応できていないと感じています。時代に取り残された「マンモス」のような存在です。一方、HBSは大きな問題意識を持っており、新たなカリキュラムにも挑戦しています。例えば、ケースメソッド中心のカリキュラムからアクション重視への変化です。

 HBSの学生が、東日本大震災の被災地に来てボランティア活動をしていたのが1つの例です。これまでの延長線上ではなく、「まったく新しいプログラムを生み出さなければビジネススクールに価値は無い」という問題意識を持っている点はさすがです。一方、日本のビジネススクールは、米国のビジネススクールが自己否定しているプログラムを、現在もそのまま提供しているだけなので、企業も、学生も満足できるはずがないのです。

 グローバルスタンダードも揺らいでいるいま、経営者は何を基準に意思決定をするか、ビジネススクールは何を教えるのか、誰が教えればいいのかが、根本的に問い直されています。マネジメントスクールではなく、リーダーシップスクールに変わるべきときです。リーダーシップを発揮できる人材を育てることが必要です。米国では、いかにマネジメントを学ばせるかではなく、「いかに次のリーダーを育てるか」に方向転換しているのです。

 日本では、1年間で5000人のMBAが誕生していますが、給料も上がらない、転職でも有利にならないMBAを取得することに何の意味があるのか、「この状況は本当に正しいのか」ということを疑問に持たなければなりません。

まずは自社のストーリーやDNAを学ぶ

 それでは、日本のビジネスパーソンは、何を学べばいいのでしょうか。大企業はもちろん、中堅クラスの企業も、必ず創業者がいて、その過程ではさまざまな苦労があり、そうした努力の積み重ねを経ていまの地位を築いてきたストーリーがあり、それぞれの会社のDNAがあります。自社のことを、もっと深く知ることは、ビジネスパーソンにとって非常に重要です。どの会社も創業者が裸一貫でスタートします。それに対する「敬意や価値が希薄」になっている気がします。どのような志で起業し、いかに苦労をし、成し遂げたのかという歴史はまさに生きた教材なのです。

 こうした教育を、社内できちんと行っていない企業が実に多いのです。社内スクールで、他社の事例や他業種の事例を教えることも必要でしょうが、その前に自社について、生きた最高の教材から学ぶべきです。米国の場合は、人材の流動性が高いので日本とは異なりますが、日本の場合は長年1つの企業に勤めることが多いので、まずは足元から学ぶことが大事です。

 「MBAが役に立たない」ということではなく、現在のビジネススクールで「学んだことは役に立たないということを学ぶことが必要」です。ビジネススクールで詰め込んだ知識は一般化しすぎていて、個別の事情のときにはほとんど役に立ちません。例えば、「経営戦略の基本は選択と集中である」と教えますが、これは本当に正しいのでしょうか。選択と集中をしても、失敗する企業は多くあります。

 選択と集中を実践した東芝が失敗し、どちらかといえば選択と集中にあまり熱心でないトヨタがなぜ成功しているかという背景を学ぶことが必要なのです。選択と集中が正しいのではなく、何を選択して、何に集中するかが重要です。SWOT分析や3C分析なども同様で、学生は習うとすぐに分析したがります。しかし、SWOT分析や3C分析だけでビジネスを定義することはできません。フレームワークに固められてしまうのなら、分析手法など知らない方が良いのです。




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